#人事評価
2025/12/24

人事考課とは?人事評価との違いや目的と評価基準を解説

シンプルな操作で評価業務の効率化を実現

目次
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人事考課(じんじこうか)とは、従業員の業務の貢献度、能力、遂行度を継続的、総合的に評価し、昇給や昇格の人事査定に反映していく仕組みのことです。

人事考課を適切に行うことで、従業員は能力を最大限に発揮することができ、企業全体の業績貢献にもつながります。

本記事では、人事考課と人事評価の違い、評価制度の目的や基準、適正な運用によるモチベーション向上や組織活性化のポイントを解説します。

人事考課とは

人事考課とは

人事考課(じんじこうか)とは、従業員の業務の貢献度、能力、遂行度を継続的、総合的に評価し、昇給や昇格の人事査定に反映していく仕組みのことです。

人事考課の評価基準や評価方法は企業によって異なりますが、評価基準や評価方法を明確にしておくことで、従業員に対して企業の方向性を示すことができます。

就職活動で、企業を選ぶ際に人事考課の評価基準を参考にする求職者も増えています。

人事考課と人事評価の違い

人事考課と人事評価に明確な違いはありません。

元々、アメリカで生まれた人事評価に、日本独自の考え方を反映させたものが人事考課です。

当初は、「高い業績を残したか否かの判断のもとに報酬の査定を行うのが人事評価」、「成績、能力、情意の3要素を重視するのが人事考課」という違いがありました。

しかし、バブルの終焉や終身雇用制度の崩壊とともに、人事考課にも成果報酬型の要素が高まっていき、人事考課と人事評価の違いは実質的にはほとんどなくなりました。

▼「人事評価」についてさらに詳しく
人事評価とは?解決すべき9つの課題と人事評価制度のメリット5つを紹介

人事考課の実施方法

人事考課は、一般的に以下の手順で実施されます。

  • 目標設定

  • 自己評価

  • 期中の振り返り

  • 評価者による評価

  • フィードバック

  • 評価調整会議の実施

評価は通常、直属の上司が部下に対して行います。

目標設定

会社の指針に基づいて、部下が主体となって目標を設定します。

この際に、売上目標のような数値化できる目標(定量評価項目)と、業務スキルの向上などの数値化が困難な目標(定性評価項目)を分けて、目標設定を行うようにしましょう。

▼「目標設定」についてさらに詳しく
目標設定の方法とは?行うメリットや全体の流れ、留意点について解説

▼「定量目標」「定性目標」についてさらに詳しく
定量的・定性的の意味と使い分け、ビジネスや目標設定では注意も

自己評価

目標の達成度を測るときに重要なポイントは、上司からの一方的な評価にならないことです。

もし、部下本人の自己評価と上司からの評価に大きなズレが生じていた場合、モチベーションの低下を招いてしまうことがあります。

評価のズレを防ぐためには、事前に評価シートのフォーマットを作成し、面談の際に活用すると効果的です。

期中の振り返り

人事考課の納得感を高めるには、期末の評価だけでは不十分です。期中(月1回や四半期ごと)の1on1ミーティングなどを通じて、定期的に進捗を確認し、行動事実を相互に確認するプロセスが重要です。

期末にまとめて評価を行うと、評価者の記憶が曖昧になり、期末の出来事だけが強く印象に残る「期末誤差」などの評価エラーが発生しやすくなります。

期中の定期的な振り返りは、こうした評価誤差を防ぐと同時に、部下の育成や目標達成の支援にも直結します。面談では進捗確認や悩みごとのヒアリングに加え、具体的な行動の確認と記録を行うことが重要です。

評価者による評価

上司からの評価を行う際は、部下に対して評価の根拠を明確に伝えることが大切です。

上司と部下の間で、評価に対する食い違いがあった場合、理由を伝えない限り、部下は評価に納得ができず、今後の成長にもつながりません。

フィードバック

フィードバックでは、目標の到達度や評価を踏まえて、次の目標や将来希望するキャリアについて話し合いを行います。

フィードバックの際は、部下の将来についての話だけではなく、会社の方向性やチーム目標を的確に伝えることが重要です。

▼「フィードバック」についてさらに詳しく
フィードバック面談とは?マイナス評価の部下への伝え方も解説!フィードバックとは?意味や効果と適切な実施方法をわかりやすく解説

評価調整会議の実施

評価調整会議(キャリブレーション会議)は、部門間・評価者間の目線合わせを行い、評価のブレを組織的に是正するために重要なプロセスです。

評価者研修を行なっても個々の評価に関する偏りは残り、放置すると「あの部長の下だと評価が高い」といった不公平感が蔓延します。また、昇給・賞与の原資には限りがあるため、全社の評価分布を調整する必要もあります。

評価調整会議では、まず人事が評価分布のガイドラインを共有しましょう。次に各評価者が、特に高評価や低評価をつけた従業員の評価根拠を発表し、他の評価者と妥当性を討議し、目線をすり合わせると、評価基準を統一しやすくなります。

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人事考課の3つの評価項目

代表的な評価項目

人事考課の評価項目は企業によって異なりますが、基本となる3つの評価項目について確認してみましょう。

人事考課の評価項目

  • 業績考課

  • 能力考課

  • 情意考課

業績考課

業績考課は、「一定期間(評価期間)において、目標に対してどの程度売り上げや利益といった、業績に関する結果を残せたかという評価」です。

業績考課ではあらかじめ、KPI(中間目標)とKGI(最終目標)を明確に設定しておくことが大切です。

業績考課での目標設定

  • KPI(中間目標):目標を達成するプロセスでの達成度合を数値化したもの

  • KGI(最終目標):最終的な定量目標のこと

業績考課は、数値化しやすく評価がわかりやすい評価項目である反面、プロセスが評価されないことや、外的な要因(景気や為替、社会情勢の変化など)により未達になってしまった従業員の評価が厳しくなってしまう側面があります。

能力考課

能力考課は、「従業員が業務を通じて身につけた能力や、自己学習によって得た知識や資格、従業員のもつ潜在的な能力などに対する評価」です。

能力考課の3つの要素

  • 保有能力:従業員がもつ基礎力、知識、技能、判断力、企画力など

  • 発揮能力:従業員がもつ能力を発揮し結果に結びつける能力、積極性、協調性など

  • 潜在能力:従業員が将来的に発揮するであろう能力

能力考課は、目標達成に対する結果ではなくプロセスを評価する評価項目で、同じ職務でも、業績向上につながるハイレベルな業務や高難易度な職務プロセスを達成した従業員に対して、高い評価を与えるべきだという視点に基づいています。

営業サポートや部署間の調整など、数字に表れない業績についても能力考課で評価します。

能力考課は基準が明確でないため、社内試験を実施する企業もあります。

情意考課

情意考課は、「従業員の業務に対する意欲や態度などに対する評価」です。

情意考課は、評価者(上司)の主観に頼らなければならない項目でもありますが、主体性や積極性、勤務態度などが評価基準となります。

情意考課の4つの要素

  • 規律性:ルールや規則を守り状況に合わせて自らを律すること

  • 積極性:物事に対して自ら進んで行動し意欲的に取り組むこと

  • 責任性:与えられた業務や役割に対して責任を持って最後まで成し遂げること

  • 協調性:目標達成に向けて立場や意見の異なる人たちと協力しながら行動すること

評価者同士で基準を統一することや、上司だけではなく同僚や他部署のメンバーなど、複数人で評価し合う体制をつくることができれば、評価者1人の主観に左右されにくくなります。

人事考課の目的とは

人事考課が行われる目的について確認してみましょう。

人事考課の目的

  • 従業員のモチベーションアップ

  • 適材適所の人材配置

  • 従業員の目標管理と能力開発

  • 会社の方向性と従業員の意識のすり合わせ

従業員のモチベーションアップ

人事考課を行う最大の目的は、「従業員のモチベーションアップ」です。

公平で納得度の高い評価によって、日ごろの頑張りが評価されると、従業員は自身が会社に認められていると感じ、モチベーションが向上します。

逆に評価が不明瞭で納得できない状況の場合、従業員のモチベーションが下がり、パフォーマンスの低下を招きかねないため、注意するようにしましょう。

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適材適所の人材配置

人事考課を行う目的の1つは、「適材適所の人材配置」です。

人事考課を通して、従業員の能力を会社が的確に把握することによって、配置転換や昇格などを活用し、人材を適切なポジションに配置することができます。

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従業員の目標管理と能力開発

人事考課を行う目的の1つは、「従業員の目標管理と能力開発」です。

従業員は、目標達成に向けて効率的に仕事を進める工夫やスキルアップに努めます。

それによって、従業員の日々の業務のレベルアップや、新たなスキルの獲得などが期待できます。

会社の方向性と従業員の意識のすり合わせ

人事考課を行う目的の1つは、「会社の方向性と従業員の意識のすり合わせ」です。

会社やチームの方針に基づいた目標設定を行い、それをもとに人事考課とフィードバックを行うことで、会社と従業員の意識や方向性のすり合わせをすることができます。

▼「人事考課のフィードバック」についてさらに詳しく
人事考課のフィードバックとは?部下と信頼関係を築くポイントも紹介

人事考課から効果的な人材育成を行うためのポイント

人事考課を通して効果的な人材育成を行うためには、3つのポイントをおさえて人事考課を行うことがポイントです。

人事考課から効果的な人材育成を行うためのポイント

  • 公平性と柔軟性のバランスが取れた評価

  • 相対評価ではなく絶対評価による評価

  • ステップアップを常に意識する

公平性と柔軟性のバランスが取れた評価

人事考課での最大の注意点は、「公平性を損なわないこと」です。

また、公平性を重視するあまり、評価が硬直的になってしまったり、一定の分野に強みをもつ従業員だけが高く評価されてしまったりするケースもあるため、注意しましょう。

柔軟にバランスが取れた評価を実施するように、時には「評価項目の見直し」を行うことも必要になります。

相対評価ではなく絶対評価による評価

人事考課を行う際は、「相対評価ではなく絶対評価による評価」を行うようにしましょう。

評価者が公平性を保って評価しているつもりでも、評価対象者が不公平さを感じている場合には意味がありません。

絶対評価は、設定された数値目標に対してどのくらい達成したかで評価を行うため、評価対象者ひとりひとりに対して、客観的な評価が行えるため、評価に対して公平性が保て、評価対象者の納得感も得られるでしょう。

ただし、頑張りや熱意についての評価も重要なため、バランスのある評価を行うようにしましょう。

▼「絶対評価」と「相対評価」についてさらに詳しく
相対評価と絶対評価の比較。両者の特徴と人事に求められること

ステップアップを常に意識する

人事考課を通して、従業員が課題を認識し、課題に対して明確に取り組めるようにすることが必要です。

面談やフィードバックを用いながら、人事考課をうまく従業員のステップアップにつなげるようにしましょう。

人事考課制度を導入する3つのメリット

人事考課制度を導入・運用すると、以下のメリットが期待できます。

  • 社員のモチベーションが高まる

  • 経営戦略や企業理念が浸透する

  • 人事情報の見える化・効率化が進む

人事考課制度は、単なる評価・査定のツールではありません。適切に運用することで、従業員の納得感を醸成し、会社の戦略を浸透させ、人事部門の業務効率化を実現する経営基盤となります。

社員のモチベーションが高まる

人事考課制度は、評価基準とプロセスを明確化し、評価の「ブラックボックス化」や上司の主観による不公平感を排除する仕組みです。

従業員は、全社共通の客観的な基準で評価されることで納得感を得やすくなります。このように、公正性への信頼と納得感を高める人事考課制度は、結果として社員のモチベーション向上につながります。

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経営戦略や企業理念が浸透する

人事考課制度は、経営層が「従業員にどのような行動や成果を期待するか」を具体的に示すメッセージとして機能します。

たとえば、顧客第一といった抽象的な企業理念も、人事考課の際には顧客の課題解決のために、どのような行動をしたかといった具体的な評価項目に落とし込まれるからです。

社員は、どのような行動が評価されるのかを知ることで、会社が大切にしている価値観や方針を、日々の業務レベルで理解しやすくなります。

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人事情報の見える化・効率化が進む

データを可視化することで、評価基準やプロセスの透明性が高まり、個々の従業員のスキルや評価履歴を一元管理できるようになります。​

これにより、従業員の適切な人材配置やキャリア形成、評価調整会議の資料活用などデータを活用した戦略的人事管理が実現しやすくなります。

また、人事管理の効率も向上し、業務負荷を大幅に軽減できます。

人事考課制度を導入する際に気を付けたい3つのデメリット

人事考課制度の導入・運用には、以下のようなリスクやデメリットがあります。

  • 制度運用に時間とコストがかかる

  • 評価基準や考課者の差で不満が生じやすい

  • 人材育成や多様性を阻害するリスクがある

制度設計や運用を誤ると、かえって従業員の不満を高め、制度が形骸化するかもしれません。ここでは、事前に把握し対策すべきデメリットについて解説します。

制度運用に時間とコストがかかる

人事考課制度は、一度設計して終わりではありません。期初(目標設定)、期中(1on1)、期末(評価・面談)、評価調整会議など、年間を通じた継続的な運用が求められ、相応の時間的・金銭的コストが発生します。

納得感を担保するには、評価者研修の実施や従業員への対応など、人事部門と管理職の双方に高い運用負荷がかかります。Excelから評価システム(SaaS)へ移行する際も、導入費用やライセンス費用が発生する点は理解しておきましょう。

これらは「制度定着のための必要投資」と捉え、SaaS活用による中長期的な集計作業や管理工数の削減を目指す設計が重要です。

評価基準や考課者の差で不満が生じやすい

人事考課制度は、評価基準が曖昧だったり、評価がブレたりすると、従業員が強い不公平感や不満を抱きやすくなる点に注意が必要です。対策としては、評価者研修を必須とし、評価誤差のパターンと抑制方法を教育することが挙げられます。また、評価調整会議を必ず実施し、部門間・評価者間のブレを組織的に是正するフローも重要です。

人材育成や多様性を阻害するリスクがある

人事考課が処遇(昇給・賞与)の査定機能に偏りすぎると、部下の成長のための率直なフィードバックが避けられ、従業員は減点をおそれて挑戦的な目標を掲げなくなるリスクが高まります。

また、評価面談が「評価結果を通知する場」になってしまうと、上司は「これを伝えたら部下のモチベーションが下がる」と不安に思い、部下を思ったフィードバックを行えないケースもあるでしょう。

さらに、評価基準が画一的であったり、知らず知らずのうちに持っている先入観が反映されたりすると、多様な人材の公正な評価が難しくなるおそれがあります。

その結果、組織の多様性が損なわれ、新しいアイデアやより良くなるチャンスを逃してしまう可能性も否定できません。

人事考課制度を導入する4つのステップ

人事考課制度の導入や見直しは、以下の4つのステップで進めます。

  1. 評価基準・方法を策定する
  2. 評価システムやフォーマットを作成する
  3. 運用方法を従業員に共有する
  4. 制度の運用をはじめる

「制度が現場に定着しない」「評価のブレが収まらない」といった課題は、導入ステップの設計不備が原因になっている場合があります。ここでは、評価基準の策定から運用開始まで、失敗しないための実践的な手順を紹介します。

1.評価基準・方法を策定する

人事考課制度を導入する第一歩は、制度の軸として、「何を評価するか(業績・能力・意欲)」、「どれだけ重視するか」、「結果をどう処遇に反映させるか」を明確にしましょう。

その上で、定めた基準を全社で公平かつ客観的に運用するために、自社の組織規模や文化に合った評価方法の選び方を検討・選定します。

2.評価システムやフォーマットを作成する

まず、ステップ1で定めた評価基準を公平に運用するため、具体的な評価項目を盛り込んだ人事考課表を作成します。

この考課表には、評価者が主観ではなく客観的な事実や行動を記録できるよう、目標設定、実績、コメント欄などを明確に設けることが重要です。

運用時は、このフォーマットに従って従業員が自己評価を入力し、評価者が評価を記録します。

最終的にこれらの情報を集約し、評価の決定やフィードバック面談の資料として活用します。

3.運用方法を従業員に共有する

制度とシステムが完成した後は評価者を中心に、制度の運用方法を伝えます。従業員説明会を開き、評価の結果がどのように昇給や昇格といった処遇に結びつくのかを明確に説明しましょう。

また、評価者となる管理職には、評価誤差を抑える方法、考課表に行動事実を具体的に記載する方法、フィードバック面談の進め方などを研修で徹底します。

このように、評価の仕組みを「見える化」することで、従業員の不信感をなくし、制度への納得感を高めることにつながります。

4.制度の運用をはじめる

制度を実際に稼働させ、年間運用カレンダーを策定し、運用します。たとえば4月に目標を作り、9月に中間面談を実施し、3月に評価をするなどです。

制度は作りっぱなしにせず、導入後も運用状況を定期的に確認し、改善を続けていくことが重要です。

これにより、制度が形骸化したり、組織の実態に合わなくなったりするのを防ぎ、継続的に公平性と納得感を維持することができます。

人事考課に役立つ評価方法

人事考課で評価を行う際に、役立つ評価方法について確認してみましょう。

人事考課に役立つ評価方法

  • MBO

  • コンピテンシー評価

  • 360度評価

  • バリュー評価

MBO

MBO(目標管理制度)は、Management by Objectivesの略で、ドラッカーが提唱した、組織マネジメントの概念です。

MBOは、従業員(もしくはチーム)が、組織貢献と自己成長の両方が見込める目標を、自ら設定し、その達成度や進捗状況に応じて、評価や業務管理を行う手法です。

▼「MBO」についてさらに詳しく
MBOとは?目標管理におけるメリットやOKRとの違いを解説

OKR

OKRは、組織全体で挑戦的な目標(Objectives)を掲げ、達成度を測る主要な結果(Key Results)を定義する目標管理手法です。第一目的は評価(査定)ではなく、組織の「方向性の統一」と「挑戦の促進」にあります。

MBOが100%達成すべきノルマに近い一方、OKRは60〜70%達成で成功とする点が異なります。挑戦的な目標設定を促すという特性上、達成率を賞与に直結させると従業員が挑戦しなくなるおそれがあるため、評価と混同しないことです。

そのため組織の挑戦目標は「OKR」で管理し、個人の賞与査定は「MBO」でするなど、目的を分けて併用するとよいでしょう。

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コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は、仕事において、成果や業績が高い人物に共通する「コンピテンシー(行動特性)」を「コンピテンシーモデル(評価基準)」として設定し、評価を行う評価方法です。

コンピテンシーは、行動観察やインタビューなどから、その行動や思考の傾向を調査分析し、項目を抽出します。

会社が従業員に求める優秀な人材を評価項目として明示することで、自社の方向性や理念を従業員と共有することができます。

コンピテンシー評価では、コンピテンシーモデルに合致すればするほど、評価が高くなります。

▼「コンピテンシー」についてさらに詳しく
コンピテンシーとは?活用メリットやデメリット、導入の流れを解説

360度評価

360度評価は、評価対象者を中心に、社内のさまざまな立場の従業員が評価を行う制度です。

一般的に、評価制度のほとんどが、上司による評価になりますが、360度評価では上司だけでなく同僚や部下、他部署の従業員などによって多面的に評価を行うため、評価に対して、客観性や公平感を生むことができます。

▼「360度評価」についてさらに詳しく
360度評価とは?メリットとデメリットや評価項目とフィードバック方法を解説

バリュー評価

バリュー評価とは、「企業の価値観や行動基準(バリュー)」をどれだけ実践できたかを評価する制度です。

バリュー評価では、たとえ大きな成果を上げていている従業員でも、バリューに沿った行動がなければ高い評価が得られないため、成績評価や能力評価制度とは異なる評価基準といえます。

▼「人事評価の種類」についてさらに詳しく
人事評価の項目とは?評価の種類と具体的な項目について解説

人事考課で気を付けるべき「人事評価エラー」

人事評価エラーとは、評価を行う際に、評価者の主観や個人的な感情に左右され、公正な評価が行えないことをさします。

人事考課で気を付けるべき、人事評価エラーについて確認してみましょう。

人事評価エラー

  • ハロー効果

  • 中央化傾向

  • 寛大化傾向

  • 逆算化傾向

  • 論理誤差

  • 対比誤差

  • 期末誤差

ハロー効果

ハロー効果は、「halo effect」といわれ、ある対象を評価する際に、その一部の特徴的な印象に引きずられて、全体の評価をしてしまうことをさします。

「halo」とは、聖人の頭上などに描かれる後光などを意味することから、「後光効果」ともいわれます。

直感や先入観など、非合理的な心理現象である「認知バイアス」の一種です。

中央化傾向

中央化傾向は、評価対象のパフォーマンスに拘らず、評価結果が中央値に集まってしまうことをさします。

評価者が自身の評価に自信がない、部下の実績や能力を的確に把握していない、低評価とすべき部下に嫌われたくないなどによって、評価者に生じる心理作用です。

寛大化傾向

寛大化傾向は、評価全体が甘くなり良い評価をしてしまう傾向のことで、全体的に高評価を与えてしまうことをさします。

評価者が評価対象者を実力以上に評価してしまったり、評価に調整が入ることを見越して高めの評価をしておくこと、評価対象者によく思われたい、などから生じる心理作用ですが、パフォーマンスに見合わない高評価は、評価対象者の成長を阻害してしまう場合もあります。

逆算化傾向

逆算化傾向は、昇格、降格、昇給、降給など、評価者が最初に評価を決めてしまい、その評価をもとに各評価項目の帳尻を合わせるよう、逆算して評価を調整する傾向のこと。

昇格させたい、チーム全体の評価を底上げしたい、など評価者の思惑によることがほとんどです。

論理誤差

論理誤差は、評価者が論理的に考えようとするあまり、似たような事柄を関連付けて考えてしまい、事実に基づく正当な評価ではなく、独自の推論や考えで部下を評価してしまう誤差のこと。

たとえば、評価対象者のパフォーマンス結果ではなく、出身大学や評価者にとって好ましい行動特性を持った評価対象者に、高評価を与えてしまうような現象です。

会社に明確な評価基準がない場合や、または自己流を押し通す身勝手な上司に起こる作用で、人事評価の不満につながる大きな要因になってしまうため注意が必要です。

対比誤差

対比誤差は、評価基準を評価者自身、あるいは他者にして、その基準をベースに評価対象者の能力評価してしまう誤差のこと。

「評価者自身の得意分野の項目は厳しく、苦手分野の項目には甘く」、あるいは「ある人を基準に、評価対象者に優劣をつけてしまう」という現象です。

評価者自身と同じ、あるいは正反対の特性をもつ対象者を評価する場合に、特に注意が必要な誤差です。

期末誤差

期末誤差は、評価直前の期末の評価が全体の評価に影響してしまう誤差のこと。

期末に差し掛かる前にはミスばかりしていても、期末に高い成果を上げた印象に引きずられ、好評価を与えてしまうような現象です。

期末誤差の傾向が評価対象者にもわかってしまうほど顕著な場合、期末だけ成果が出るよう努力をするといった従業員が増える恐れがあるため、注意が必要です。

▼「人事評価エラー」についてさらに詳しく
ハロー効果とは?知っておくべき種類と人事評価エラー、例を解説

人事考課面談を効果的に実施するコツ

人事考課面談(フィードバック面談)を効果的に実施するコツは、以下のとおりです。

  • 公平性を保つための準備をする

  • 信頼関係を築く傾聴を徹底する

  • 成長につなげる課題設定をする

「評価のブラックボックス化」や「納得感の低下」は、面談の準備不足と進め方の誤りが原因です。面談を査定の通知で終わらせず、育成と動機づけの場に変えるための方法を紹介します。

公平性を保つための準備をする

効果的な人事考課面談は、準備の質が公平性に影響を与えます。評価者は、評価の根拠となった具体的な事実を整理し、自社の評価基準と客観的に照らし合わせておくことが、公平性を担保するために重要です。

準備不足のまま面談に臨むと、その場の印象や主観で話してしまう場合があります。部下から「なぜその評価なのか」と問われた際に具体的な事実で答えられなければ、不信感を招く原因となります。

人事考課表に記載する際は、事実と評価を明確に紐づけて記述しておくと第三者から見て評価理由を把握しやすくなります。

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信頼関係を築く傾聴を徹底する

人事考課面談では、部下の自己評価や所感を傾聴した後、フィードバックを伝え、認識のすり合わせをする対話の場と考えることが重要です。評価者が高圧的な態度をとったり、部下の意見を遮ったりすると、本音を話さなくなり、評価への納得感を得づらくなります。

具体的には、部下の話を途中で遮らず、相槌を打ちながら最後まで耳を傾け、言葉だけでなく表情や間、感情にも注意を払います。

この聴く姿勢が部下の安心感を生み、フィードバックを受け入れられやすくなります。

成長につなげる課題設定をする

面談のゴールは、過去の評価を確定するだけでなく、評価結果を踏まえ、部下の来期の成長に向けた、具体的な行動目標について合意形成することです。

評価の話だけで終わると、部下のモチベーションが低下したまま面談を終えることになる可能性があります。

評価の根拠を明確にし、将来の成長につなげる課題設定ができると、人事考課を人材育成の機会にできます。

人事考課を適切に行うことの重要性

人事考課は、大手企業では8割以上の企業で採用されていますが、残念ながら全ての企業で適切な人事考課が実施されているとはいえません。

人事考課の評価方法や制度が整っていないために、経営者や役職者の感覚によって評価がされてしまっている場合もあります。

適切な人事考課が行われない場合、従業員のモチベーションや生産性を下げてしまったり、スキルアップなどの成長を阻害してしまうことになってしまうでしょう。

適切な評価をするためにも、評価者である上司は、評価対象者と日ごろから十分なコミュニケーションをとり、常にステップアップできることを念頭に置くことが大切です。

柔軟に、かつ公平なスタンスで、従業員が主体性を持って目標管理を行える状態を作れるようにする必要があります。

人事考課制度の設計や見直しで「業績貢献」

人事考課は、従業員の給与や賞与の査定だけでなく、従業員のスキルアップやモチベーションの向上と維持、生産性の向上に不可欠な制度です。

適切な人事考課を設計し実施することで、従業員が能力を最大限に発揮することができ、企業全体の業績貢献にもつながります。

「HRBrain 人事評価」は、人事評価の実施からデータ集計までをワンストップで実現します。

また、評価基準や評価プロセスの見える化によって、社内コミュニケーションの改善や、評価納得度の向上を促進します。

HRBrain人事評価の特徴

制度や目的に合わせたテンプレートが豊富

OKR、MBOなどの「評価テンプレート」や、1on1やフィードバックなどに使用する「面談シート」が充実しています。

企業ごとのプロセスに合わせて承認フローや項目を自由に設定

評価シートやワークフローのカスタマイズが可能なため、評価制度の変更にも柔軟に対応することができます。

評価の集計や調整もシステム上で完結

部署別など任意の項目で集計が可能で、評価結果の調整もシステム上で完結できます。

株式会社HRBrain 中西諒
中西 諒
  • 株式会社HRBrain コンサルティング事業部 組織・⼈事コンサルタント

大学卒業後、組織・人事コンサルタントとして、研修設計/納品、アセスメント設計/納品等、商材開発から納品フロントまで一気通貫でプロジェクトを担当。
各社の評価制度に合わせた評価者研修の設計も担当しており、これまでの支援実績は200社以上。

現在は、HRBrainコンサルティング事業部で組織・人事コンサルタントとして活躍中。人事評価制度設計のコンサルティングに加え、評価者研修/1on1研修/フィードバック研修/キャリアマネジメント研修等、企業の課題に合わせた様々な研修の設計/納品を担っている。

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