#人材育成
2025/07/31

成果が変わる!従業員エンゲージメント調査、効果を出す4つの手順

組織状態の把握から分析・課題抽出までワンストップで実現

目次
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従業員エンゲージメント調査を実施したものの、有効な改善につながらない事態を防ぐには、設問設計と活用方法が鍵となります。適切な調査設計は、単なるアンケートではなく組織の成長を促進するために欠かせません。

本記事では、エンゲージメント調査の目的設定から調査項目の選定、効果的な調査方法、そして調査結果からアクションプランへの落とし込み方まで、実践的なポイントを解説します。

従業員エンゲージメントを効果的に調査できれば、従業員の声を正確に把握し、継続的な組織改善につなげる調査サイクルを自信を持って運用できるようになるでしょう。

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従業員エンゲージメント調査とは

従業員エンゲージメント調査の基本的な考え方と、その重要性について以下の内容を解説します。

<従業員エンゲージメント調査の基本>

  • 従業員エンゲージメント調査の種類

  • 従業員エンゲージメント調査が必要な背景

  • 従業員エンゲージメント調査の目的

調査は、組織と従業員の関係性を可視化し、改善のための出発点となるものです。調査を通じて、企業は従業員の声を把握し、働きやすい環境づくりや組織改善につなげられます。

従業員エンゲージメント調査の種類

従業員エンゲージメント調査には、大きく分けてセンサスサーベイとパルスサーベイの2種類があります。以下に、それぞれの特徴をまとめました。

項目

内容

センサスサーベイ

・年1〜2回実施される大規模調査
・設問数は30〜100問程度
・組織全体の状態を広範囲に把握できるが、従業員の負担が大きい
・リーダーシップ、評価制度、キャリア成長などを包括的に測定する

パルスサーベイ

・週次や月次で行う簡易調査
・設問数は5〜15問程度に限定
・特定テーマや施策の効果をタイムリーに測定でき回答負担が少ない

調査方法は、オンラインと紙媒体の2通りがあります。オンライン調査は集計効率に優れており、スピーディな分析が可能です。一方、紙媒体はITリテラシーに依存せず、すべての従業員が回答しやすいメリットがあります。

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従業員エンゲージメント調査が必要な背景

近年、グローバル化やテクノロジーの進展により働き方が多様化し、人材確保の競争が激しくなっています。そのため、従業員の定着と能力の最大化が企業成長の鍵となり、エンゲージメント調査の重要性が高まっています。

一方で、エンゲージメントという目に見えない要素をどのように可視化し、測定するかはまだまだ課題です。企業が高い離職率や生産性の低迷、部門間のコミュニケーション不全といった問題に直面しており、根本原因を突き止めるには、従業員の声を体系的に収集・分析が求められます。

従業員エンゲージメント調査の目的

従業員エンゲージメント調査の目的は、組織の活性化や従業員のモチベーション向上につなげるための、具体的な改善アクションを導き出すことです。

効果的な調査を実施するには、以下の「SMARTの法則」にもとづいた明確な目標設定が不可欠です。

評価軸

意味

S(Specific/具体的)

誰が・何を・どこでなど、明確で具体的な目標にする

M(Measurable/測定可能)

進捗や達成度を数値で評価できるようにする

A(Achievable/達成可能)

現実的に実現できる目標にする

R(Relevant/関連性)

目的やビジョンと整合性のある目標にする

T(Time-bound/期限付き)

達成までの期限やスケジュールを設定する

また、調査の意図や活用方法、匿名性の確保について、事前に従業員へ丁寧に伝えることも重要です。なぜこの調査を行うのか、結果をどう活かすのかを理解してもらうと、安心感が生まれ、本音の回答を引き出しやすくなります。

調査を実施してもやりっぱなしになるケースは少なくありません。しかし、目的は測定結果をもとに課題を特定し、優先順位をつけて改善に取り組むことです。

その後、実行した施策の効果を再び測定し、「Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)」のPDCAサイクルを継続的に回すことで、エンゲージメント向上の取り組みが組織文化として定着していきます。

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従業員エンゲージメント調査を実施する4つのメリット

従業員エンゲージメント調査を実施すると得られるメリットは、以下の通りです。

<従業員エンゲージメント調査を実施する4つのメリット>

  • 職場の問題を早く見つけて対処できる

  • 人材の定着率向上

  • 組織の生産性が向上する

  • リファラル採用の活用が進む

これらのメリットを通じて、従業員一人ひとりの意欲や能力が引き出され、組織としての生産性や創造性も高まる職場づくりが実現するでしょう。

職場の問題を早く見つけて対処できる

職場で従業員が抱える不満や課題に気づかないまま状況が悪化し、離職や生産性の低下につながってしまうケースがあります。

従業員の声をルールにもとづいて収集できれば、問題の兆候をデータとして可視化できます。特にパルスサーベイのような高頻度の簡易調査を活用すれば、組織内の変化をリアルタイムに近い形で把握することも可能です。

たとえば、特定の部署でコミュニケーションスコアが急に低下した場合、マネジメントの在り方に何らかの課題がある可能性が考えられます。さらに、調査に設けた自由記述欄からは、数値では捉えきれない制度への不満や職場環境に関する声などが得られるでしょう。

人材の定着率向上

企業における離職は、採用や教育にかかるコスト、業務引継ぎの負担、チーム力の低下などの損失が生まれます。

エンゲージメント調査では、離職につながる不満や課題の要因を特定できるため、根拠にもとづいた対策が可能です。実際、エンゲージメントが高い部署ほど、離職率が低い傾向です。

たとえば、調査により若手社員がキャリア成長に不安を感じていれば、メンター制度の導入やキャリアパスの明確化を実施し、若手層の離職率を改善する可能性が高まるでしょう。

さらに、調査を通じて従業員が自分の声が反映されていると実感できれば、組織への信頼感や帰属意識が高まります。

組織の生産性が向上する

エンゲージメントの高い従業員は、自発的に業務へ取り組み、チームへの貢献度も高まる傾向があります。

厚生労働省「令和元年 労働経済の分析」や研究では、エンゲージメントスコアが高いほど、売上や利益率、顧客満足度といった成果も高くなる傾向がわかっています。調査によって生産性を妨げている要因を特定できれば、的確な改善策の立案が可能です。

また、営業部門においては、エンゲージメント施策を導入したチームのほうが、未実施のチームに比べて高い売上達成率を記録したという報告もあります。

リファラル採用の活用が進む

従業員エンゲージメントを高めると、リファラル採用(社員による知人・友人の紹介)の活性化を期待できます。

エンゲージメントの高い社員は自社に誇りを持ち、職場をすすめる意欲が高まります。この傾向を測る指標として用いられるのが、eNPS(従業員推奨度)です。「自社を友人や家族にすすめたいか」という質問を通じて、数値化されます。

eNPSが高い組織では紹介による応募が増え、広告費を抑えながら企業文化に合った人材の確保が可能になるでしょう。さらに、紹介者と応募者との間に信頼関係があるため、入社後の定着率向上も期待できます。

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従業員エンゲージメントの調査手順

従業員エンゲージメント調査を効果的に実施するためには、以下の手順が効果的です。

<従業員エンゲージメントの調査手順>

  1. 調査目的を明確化し共有する
  2. 調査ツールの選定と準備をする
  3. 調査の実施を伝えスムーズに進める
  4. 調査結果をフィードバックし改善につなげる

手順通りなら、調査が形骸化せず、組織の成長につながる取り組みとして機能します。

1.調査目的を明確化し共有する

従業員エンゲージメント調査を成功に導くための第一歩は、「なぜこの調査を行うのか」という目的を明確にすることです。

目標の設定には「SMARTの法則」を活用すると効果的です。たとえば、「半年以内に、コミュニケーションに関するエンゲージメントドライバーのスコアを10%向上させる」といったように、具体的かつ測定可能な目標を掲げると、調査の方向性が明確になります。

目的を定める際には、課題と調査目的を結びつけられるように、以下の点を意識しましょう。

組織課題

調査の目的

高い離職率

離職要因の特定と対策の効果測定

部門間の連携不足

コミュニケーションの実態把握

業務負担感の増大

仕事量に関する従業員の実感を可視化

そのうえで、調査の目的や意図を従業員に丁寧に伝えましょう。全社ミーティングや社内ネットワークなどを活用し、調査の背景や結果の活用方法、匿名性の保証までを具体的に説明します。

特に、「結果をどう改善アクションにつなげるのか」を明確にすることで、従業員の理解と協力を得やすくなります。経営層やマネージャーによる積極的な発信も重要です。

2.調査ツールの選定と準備をする

効果的な従業員エンゲージメント調査を行うには、以下のポイントに沿った自社に適した調査ツールの選定が大切です。

<調査ツール選定時の確認ポイント>

  • 操作性の高さ(直感的に使えるか)

  • 設問のカスタマイズ自由度

  • データ分析機能の充実度

  • セキュリティ対策の有無とレベル

  • 費用対効果(予算に見合っているか)

  • 導入後のサポート体制

自社の規模や課題、予算に合わせて比較検討し、可能であれば無料トライアルやデモを通じて実際の使用感を確かめるとよいでしょう。

次に、適切な設問設計をするため、以下のポイントをおさえます。

<設問設計のポイント>

  • 結果指標として、eNPSや総合満足度を含める

  • 背景要因の仕事のやりがい、成長機会、上司との関係性もバランスよく設問に盛り込む

  • 回答時間は10〜15分を目安とする

  • 専門用語や曖昧な表現を避け、平易な言葉を使用する

また、経年での比較を可能にするためには、核となる設問を継続的に使用することも大切です。準備が整ったら、本番実施の前に少人数でパイロットテストを行い、設問のわかりやすさや回答時間に問題がないかを検証しましょう。

3.調査の実施を伝えスムーズに進める

従業員エンゲージメント調査をスムーズに実施するには、適切なタイミングの選定と丁寧な事前説明が大切です。以下に、ポイントをまとめました。

<従業員エンゲージメント調査の実施時のポイント>

ポイント

内容

実施時期

・年度末・決算期・組織変更直後は避ける
・落ち着いて回答できる時期に実施する

回答期間

・一般的に1〜2週間程度

調査方法

・オンライン・紙媒体
・ハイブリッド
※職場環境や従業員構成に応じて選択

実施前の説明

・目的
・所要時間
・回答方法
・匿名性の保証
・人事評価等への非利用を明示

回答率向上策

・リマインダー送付
・経営層・管理職からの呼びかけ

回答率を高める工夫として、調査期間中にリマインダーを送る、経営層や管理職からの呼びかけを行うといった方法が効果的です。

とはいえ、もっとも重要なのは、従業員が「過去の調査で自分たちの声が組織を変えた」という実感を持っていることです。こうした成功体験の蓄積こそが、自然な協力姿勢を生み出す原動力になります。

4.調査結果をフィードバックし改善につなげる

従業員エンゲージメント調査における最大のポイントは、結果の分析と具体的な改善アクションへつなげることです。

以下に、従業員エンゲージメント調査後の活用ポイントをまとめました。

ポイント

内容

多角的な分析を行う

・全体平均だけでなく部署別・役職別・年齢層別にクロス集計する
・特定層の傾向や課題を可視化する
・自由記述コメントから現場の声や改善のヒントを読み取る

迅速なフィードバックを実施する

・調査結果をできるだけ早く従業員に共有する
・よい点と課題の両方を率直に伝える
・部署ごとのディスカッションなど双方向の対話を取り入れる

優先順位を整理し改善

・見えた課題に対して優先順位を明確にする
・1on1ミーティングの強化、キャリア支援制度の導入、評価制度の見直しなど

これらの施策を効果的に進めるには、人事部門だけでなく、経営トップの強い意思と、現場の管理職が自ら動くことが大切です。

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従業員エンゲージメント調査で活用できる質問例

従業員エンゲージメント調査で活用できる具体的な質問例を紹介します。

<従業員エンゲージメント調査で活用できる質問例>

  • 仕事への熱意(ワークエンゲージメント指標)に関する質問例

  • 職場の満足度(総合的なエンゲージメント)に関する質問例

  • 人間関係・キャリアなど(エンゲージメントドライバー)に関する質問例

これらの質問を適切に設計・活用することで、従業員の状態や課題をより正確に把握できるようになります。

仕事への熱意(ワークエンゲージメント指標)に関する質問例

ワークエンゲージメント指標は、従業員が仕事にどれほど熱意を持ち、活力を感じ、没頭しているかを測定する重要な項目です。特にユトレヒト大学が開発した「UWES(Utrecht Work Engagement Scale)」は、安心して活用できる実績のある方法です。

このフレームワークでは、「活力(Vigor)」「熱意(Dedication)」「没頭(Absorption)」の3要素にもとづいて評価を行います。

カテゴ

質問例

活力(Vigor)

・仕事をしていると、活力がみなぎると感じる
・朝起きると、仕事に行くのが楽しみだ
・長時間でも粘り強く仕事に取り組める

熱意(Dedication)

・自分の仕事に誇りを感じている
・仕事は挑戦しがいがある
・自分の仕事には目的がある

没頭(Absorption)

・仕事に集中していると、時間が経つのが早く感じる
・仕事中は周囲のことを忘れてしまうことがある
・没頭しているときに幸福感を得る

これらの設問に対して、通常「まったくそう思わない」〜「非常にそう思う」の5段階評価を用い、スコアを数値化すると、部署別比較や経年変化の分析が可能です。

職場の満足度(総合的なエンゲージメント)に関する質問例

総合的なエンゲージメント指標は、従業員の満足度や愛着、推奨意向を通じて、組織全体の健全性を端的に把握できる評価軸です。

特にeNPSは代表的な手法であり、「現在の会社を親しい友人や知人にどの程度すすめたいか」という設問に0点(まったくすすめたくない)〜10点(非常にすすめたい)で回答を得ます。推奨者(9〜10点)、中立者(7〜8点)、批判者(0〜6点)の割合からスコアを算出します。

そのほかの総合指標には、以下のような質問が有効です。

<職場の満足度に関する質問例>

  • 「現在の勤務先にどの程度満足しているか」

  • 「現在の仕事にやりがいを感じているか」

  • 「今後も今の会社で働き続けたいと思うか」

  • 「他によい転職先があっても残りたいと思うか」

  • 「自分は会社の一員であることに誇りを持っているか」

  • 「会社の成功に貢献したいという気持ちがあるか」

これらはエンゲージメントの結果を示す設問であり、その要因を明らかにするには、次に紹介するドライバー指標との組み合わせが欠かせません。

人間関係・キャリアなど(エンゲージメントドライバー)に関する質問例

エンゲージメントドライバーとは、従業員のエンゲージメントに影響を与える具体的な要因であり、その測定は「なぜエンゲージメントが高いか低いのか」という原因を特定するうえで不可欠です。以下に、質問例をまとめました。

内容

組織ドライバー

・経営陣は会社の将来について明確なビジョンを示しているか
・会社は従業員の意見を尊重し、意思決定に反映しているか
・評価制度は公平に運用されていると感じるか

職務ドライバー

・現在の仕事内容にやりがいを感じているか
・スキルや能力を十分に活かせていると感じるか
・キャリア成長の機会があると感じるか
・適切な裁量権や自律性が与えられているか

個人ドライバー

・上司は成長を気にかけてくれていると感じるか
・チームメンバーと協力しやすい環境だと感じるか
・仕事と私生活のバランスが取れているか
・職場に自由に意見を発言できる雰囲気があるか

これらのドライバーを通じて、数値だけでは見えにくい背景要因を可視化できるようになるでしょう。

従業員エンゲージメント調査結果の活用方法

従業員エンゲージメント調査で得られた結果をどのように組織改善に活かすか解説します。

<従業員エンゲージメント調査結果の活用方法>

  • 組織全体の課題と改善策の整理

  • これまでの改善施策の見直し

  • マネジメント層の意思決定サポート

  • 人材配置の最適化を図る


調査結果を「測る」だけにとどめず、具体的な意思決定や現場の変化につなげると、組織改善の鍵になります。

組織全体の課題と改善策の整理

従業員エンゲージメント調査のデータは、ただ集めるだけでは意味がありません。効果的に活用するためには、次のようなステップを踏んで分析・改善に活かすことが大切です。

項目

内容

多角的な分析で組織の実態を把握

・全体平均や回答分布を確認する
・部署別、役職別、年齢層別、勤続年数別にクロス集計する
・特定層の課題や傾向を可視化する

課題の背景を掘り下げる

・「5Why分析」などを活用し、根本原因を探る
・表面的な数値ではなく背景にある要因を特定する

優先順位を明確にする

・すべての課題に一度に取り組まない
・フレームワークで整理する
・効果が高く、対応のしやすい課題から着手する

改善策の立案と実行体制の構築

・全社共通施策+部署ごとの対応を併用する
・実行責任者を明確にする
・スケジュールを定めて進捗を管理する
・段階的な展開を意識して無理なく導入する


また、優先順位を明確にするためには、以下のような課題整理のフレームワークが便利です。

フレームワーク名

内容

アイゼンハワーマトリクス

重要度 × 緊急度

対応すべき優先順位を整理

Value vs. Effort(バリュー・バーサス・エフォート)

効果(価値) × 労力

費用対効果の高い改善アクションから着手

組織への影響が大きく、かつ早急な対応が求められる課題から順に取り組みましょう。

これまでの改善施策の見直し

従業員エンゲージメント調査を定期的に実施すると、過去の結果と比較しながら、施策の効果や新たな課題を把握できます。

たとえば、以前に指摘されたワークライフバランスの問題に対してフレックスタイム制度を導入した結果、スコアが改善していれば一定の効果があったと判断できるでしょう。

一方、変化が見られない場合は、制度の運用方法や従業員への周知が不十分である可能性があります。また、数値だけでなく自由記述のコメントもあわせて確認すると、より深い課題に気づけます。

調査は結果を評価するためだけでなく、現場の声を活かして改善を重ねるための重要なプロセスです。

マネジメント層の意思決定サポート

人事や組織づくりに関する判断をするうえで、感覚や経験に頼った判断では偏りが生じやすく、誤った意思決定につながるおそれがあります。調査によるデータは組織の実態を客観的に把握する手段として有効です。

特に、エンゲージメントと売上や離職率、顧客満足度などの業績との関係を分析すると、従業員への投資が経営成果にどう影響するかを数値で確認できます。

活用場面

目的・効果

新制度導入の前後での比較

制度の効果を数値で把握し、見直しにつなげる

働き方改革の影響モニタリング

施策が従業員にどう受け止められているかを確認する

離職率や業績悪化の予兆の把握

早期対応につなげることでリスクを最小限におさえる

エンゲージメントスコアは、離職や業績悪化といった問題を事前に察知できる「先行指標」として活用できます。調査を継続することで、数値の変化を時系列で追え、短期的な動きだけでなく長期的な傾向も把握しやすくなるでしょう。その結果、より的確で戦略的な判断が可能になります。

人材配置の最適化を図る

従業員エンゲージメント調査の結果は、個人やチームの強み・適性・意欲を把握するのに役立ちます。これにより、従業員が力を発揮しやすい環境をつくり、適切な人材配置やチーム編成が可能です。

たとえば、新しいことに挑戦したいという意欲が高い人には新規プロジェクトを、専門性を深めたい人には、品質向上などの役割が適しているでしょう。

調査結果とあわせて、スキル評価や1on1ミーティングの情報も活用することで、より柔軟で効果的な配置が可能です。

従業員エンゲージメント調査の注意点

従業員エンゲージメント調査を実施する際に注意すべきポイントは、以下の3つです。

<従業員エンゲージメント調査の注意点>

  • 回答者の負担を最小限にする

  • 情報の取り扱いに配慮する

  • 調査後のフィードバックを徹底する

これらの点を意識して運用することで、従業員の信頼を損なうことなく、調査の成果を組織改善に活かすことが可能です。

回答者の負担を最小限にする

従業員エンゲージメント調査では、質問数が多すぎたり内容が難解だと、回答率が下がり、正確なデータが得られにくくなります。そのため、調査時間は10〜15分、設問数は50〜100問以内が目安です。

設問は誰にでもわかる言葉で、ひとつの設問にひとつの内容だけを問うようにします。たとえば、「ナレッジ」を「知識」に言い換えたり、「忙しく、やりがいもあるか?」という質問を「忙しさを感じているか?」と「やりがいを感じているか?」という2つの質問に分けたりするのが効果的です。

調査時期は、繁忙期や組織変更直後を避けるのが基本です。負担を減らすには、短期間で行うパルスサーベイも有効です。また、ITリテラシーに差がある場合は、オンラインと紙の併用も検討しましょう。

情報の取り扱いに配慮する

従業員エンゲージメント調査は、匿名性やデータの安全性に不安があると、従業員が本音を回答しにくくなり、結果の信頼性が低下するおそれがあります。

以下に、従業員エンゲージメント調査における情報の取り扱いに関するポイントをまとめました。

ポイント

内容

自由記述の配慮

・個人が特定されないよう事前に注意を促す
・センシティブな記述を控えるよう説明する

集計単位の工夫

・少人数部署は他部署と統合し集団単位で集計
・回答者が特定されない規模で分析

アクセス制限と管理

・閲覧できるのは業務上必要な最小限の担当者のみ
・調査データは厳格に管理・保管

個人情報保護法への対応

・利用目的を明示し通知
・必要に応じて同意を取得
・安全管理措置の実施
・第三者提供の制限

処遇との分離

・調査結果が人事評価や異動に直接影響しないことを明示
・従業員の不安を軽減し本音を引き出す

外部ツールのセキュリティ確認

・通信の暗号化の有無を確認
・不正アクセス防止措置の有無を確認

こうした情報の取り扱いに関する方針は、調査前に社内で定め、従業員にわかりやすく共有すると、信頼の醸成と協力の確保につながります。

調査後のフィードバックを徹底する

従業員エンゲージメント調査は、結果を放置すると声が無視されたと受け取られ、信頼を損なうおそれがあります。

調査後はできるだけ早く概要を共有し、よい点も課題も正直に伝えることが大切です。図表などを使って視覚的に示すと、理解しやすくなります。また、一方通行で終わらせず、質疑応答や部署ごとの対話も取り入れると効果的です。

特に重要なのは、課題に対して具体的な改善策を示すこと。さらに進捗を定期的に報告することで、従業員は意見が活かされていると感じ、次回調査への協力にもつながります。

従業員エンゲージメント調査を組織改善に活かした成功事例

従業員エンゲージメント調査を活用して実際に組織改善に成功した企業の取り組みについて紹介します。各社は自社の状況に合わせた工夫を重ね、調査結果を現場改善や経営戦略に活かしています。

<従業員エンゲージメント調査を組織改善に活かした成功事例>

  • 「従業員エンゲージメント業界No.1」実現に向けて組織診断サーベイを導入|鴻池組

  • 人的資本経営の強化に向けたサーベイ活用|株式会社アドウェイズ

  • 従業員に寄り添うサーベイ運用で組織改善|はるやま商事株式会社

これらの事例に共通しているのは、調査を単なる形式的な手続きとせず、現場と経営をつなぐ変革の起点として活用している点です。調査結果に対する迅速なフィードバックと具体的な改善アクションが成果を生む鍵となっています。

「従業員エンゲージメント業界No.1」実現に向けて組織診断サーベイを導入|鴻池組

株式会社鴻池組_導入事例

鴻池運輸株式会社は、1880年創業の歴史ある総合物流企業です。国内外に多様な事業を展開し、約2万4千人の従業員が在籍しています。

同社では従来、人事評価制度が事業部ごとに異なり、評価基準のばらつきや評価プロセスの非効率性が課題となっていました。Excelを用いた評価管理は限界に達しており、評価の納得感向上と、結果を人材育成へつなげる仕組みづくりが急務でした。

複数のシステムを比較検討する中で、ITに不慣れな従業員でも直感的に操作できるシンプルなUIと、充実したサポート体制が決め手となり、「HRBrain」の導入を決定しました。評価制度の構築から相談できる点も高く評価されています。

導入により、評価フォーマットの全社統一が実現し、評価プロセスの大幅な効率化に成功しました。評価基準が明確になったことで評価のばらつきが抑制され、従業員の納得感も向上しています。

現在は、蓄積された人材データを分析し、戦略的な人員配置やサクセッションプランの検討にも活用しており、未来の経営幹部育成に向けた基盤構築を進めています。

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人的資本経営の強化に向けたサーベイ活用|株式会社アドウェイズ

株式会社アドウェイズ_導入事例

インターネット広告事業をグローバルに展開する株式会社アドウェイズは、事業の多角化と組織拡大に伴い、人事評価制度の形骸化という課題を抱えていました。従来のアナログな評価プロセスは非効率で、評価基準の曖昧さから社員の納得感が低下。目標管理制度も十分に機能しておらず、マネージャーの業務負担が増大していました。

これらの課題を解決するため、人事評価システム「HRBrain」が導入されました。操作のわかりやすさや、機能改善のスピード感、そして伴走型のカスタマーサクセスによる手厚いサポート体制が導入の決め手となりました。

導入により、評価プロセスは完全にオンライン化され、管理工数が大幅に削減されました。評価基準が明確になり、目標設定から評価、フィードバックまでが一貫して管理できるようになったことで、社員の評価に対する納得感が向上。蓄積された人事データを活用することで、客観的な事実にもとづいた1on1や、戦略的な人材配置・育成計画の策定が可能になるなど、質の高いピープルマネジメントを実現しています。

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人的資本経営の強化。経営・人事・現場をつなぐ、自社らしさを重視したサーベイ活用

従業員に寄り添うサーベイ運用で組織改善|はるやま商事株式会社

はるやま商事株式会社_導入事例

株式会社はるやまホールディングスは、紳士服の販売を主軸に事業を展開する企業です。同社では以前、評価の納得感やプロセスの効率化、さらには従業員の育成計画の不明確さに課題を抱えていました。特に、Excelを用いた評価管理では、プロセスの属人化や評価のばらつきが生じていました。

そこで同社が導入したのが、人事評価システム「HRBrain」です。導入の決め手は、誰にでも使いやすいシンプルなUIと、他社製品と比較した際のコストパフォーマンスの高さでした。また、充実したサポート体制も高く評価されています。

HRBrainの導入により、評価プロセスが可視化され、評価の納得感が大きく向上しました。評価にかかる時間も大幅に短縮され、目標設定と評価が連動することで、従業員一人ひとりの育成計画が明確になりました。結果として、評価業務の工数を80%削減するという具体的な成果を上げています。これにより、人材育成のPDCAサイクルが確立され、従業員のエンゲージメント向上にもつながりました。

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従業員エンゲージメントを調査するなら「HRBrain 組織診断サーベイ」

HRBrain 組織診断サーベイは、従業員エンゲージメントを見える化し、組織課題の特定から改善策の実行までを支援するサーベイツールです。

直感的な操作性と柔軟な設問設計により、高い回答率を実現。リアルタイム集計やベンチマーク分析、AIによる課題抽出と改善提案機能「EX Intelligence」により、調査結果をすばやく施策につなげ、組織改善を支援します。

従業員のエンゲージメント向上や離職率の改善といった課題をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適な活用方法をご提案します。詳細につきましては、公式ホームページもあわせてご覧ください。

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従業員エンゲージメント調査を組織改善に活かそう

従業員エンゲージメント調査は、組織改善の第一歩となる重要なツールです。適切な目的設定と設問設計により、職場の問題発見、人材定着率向上、生産性向上などのメリットが得られます。

調査実施の際は目的の明確化、適切なツール選定、結果の効果的なフィードバックが重要です。調査結果は組織課題の整理や改善策の立案に活用し、従業員の負担軽減と情報取り扱いに配慮すると、継続的な組織改善につながります。

成功事例も参考にしながら、自社に最適な調査方法を選択し、エンゲージメント向上を実現しましょう。

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株式会社HRBrain 宮本幸輝
宮本 幸輝
  • 株式会社HRBrain コンサルティング事業部 組織・⼈事コンサルタント

大学卒業後、コンサルタント企業に入社し、大手家電メーカーや製薬企業に人材マネジメントや研修を提供。また50名〜500名規模企業への⼈事評価制度構築⽀援など組織開発領域を幅広く携わる。

その後、医療業界のネットベンチャー2社のジョイントベンチャーの立ち上げに携わり、自社組織の開発にも貢献。

総合経営コンサルティング会社に移り、50名の⽼舗企業からベンチャー企業、IT(2000名)規模の⼈事制度構築⽀援を複数経験。その他にも経営戦略コンサルや⼤⼿⽯油卸企業の店舗組織変⾰プロジェクトにも参画。

現在は、HRBrain コンサルティング事業部で組織人事コンサルタントとして活躍中。
人事戦略策定から人事評価制度コンサルティング領域まで年間約20社以上を支援する。

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