#人材育成
2025/07/10

サーベイフィードバックとは?メリット・成功のコツを解説

組織状態の把握から分析・課題抽出までワンストップで実現

目次
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サーベイフィードバックは、従業員のエンゲージメントを高め、組織の継続的な成長を促す手法です。

自分の意見が組織改善に反映され、従業員が当事者意識をもつようになると、課題に対して具体的なアクションを取り、エンゲージメントや生産性の向上が期待されます。こうした循環を繰り返すと、改善が根付く組織文化が形成されるでしょう。

本記事では、サーベイフィードバックの基本的な定義や実施のステップ、成功させるコツなどを解説します。

サーベイフィードバックとは?定義と重要視される理由

サーベイフィードバックの基本を、以下の項目で解説します。

<サーベイフィードバックを知る3つの項目>

  • サーベイフィードバックの基本概念

  • サーベイフィードバックが重要視される理由

  • サーベイの種類

従業員エンゲージメントの向上と、組織成長に直結する取り組みになるので、まずは基本を正しく理解し、目的に応じた手法を選びましょう。

サーベイフィードバックの基本概念

サーベイフィードバックとは、従業員や顧客から収集したアンケートや調査を関係者に共有し、課題を認識したうえで改善策を検討する仕組みです。単なる報告にとどめず、データを分析し、強みや課題を明確にしたうえで、以下のステップで改善を進めましょう。

<サーベイフィードバック5つのステップ>

  1. データ収集
  2. 分析
  3. 結果共有
  4. 対話
  5. 行動

このサイクルを継続することで、組織の課題解決能力が高まり、成長を支える土台になります。まずは一部のチームから小さくはじめて、結果と行動をつなげる仕組みを構築しましょう。

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サーベイフィードバックが重要視される理由

サーベイフィードバックが重要視される理由は、従業員の意見が組織運営に反映されると、信頼感やエンゲージメントが高まり、仕事への主体性や前向きな行動につながるためです。

また、サーベイにより組織の課題を客観的に把握でき、解決策を検討しやすくなります。結果をもとにした対話は、部門間の連携を促進し、関係構築のきっかけになります。

こうした複数の効果が重なり、組織の成長や変革を後押しするでしょう。

サーベイの種類

効果的なサーベイフィードバックには、目的に合ったサーベイの選定が不可欠です。サーベイには、測定対象や実施頻度に応じた以下の種類があります。

種類

内容

モラールサーベイ

・福利厚生や職場環境の満足度を調査
・制度改善の課題を可視化

エンゲージメントサーベイ

・組織への共感や仕事への誇りを測定
・貢献意欲や主体性の把握に活用

パルスサーベイ

・短い設問を定期実施して状態を把握
・変化に迅速に対応しやすくなる

組織サーベイ

・組織やマネジメントの課題を調査
・改革や戦略立案の材料になる

適切なサーベイを設計・実施するため、各サーベイの特徴を見ていきましょう。

モラールサーベイ

モラールサーベイは、従業員の士気や意欲、職場環境への満足度を把握する調査です。 業務への前向きさや精神的な充実度を可視化し、人間関係の悩みやハラスメントの有無など、職場課題の早期発見が可能になります。

たとえば、特定の部署で低い結果が出た場合に原因を深掘りすると、具体的な労働環境の改善策やコミュニケーションの活性化策を実施するきっかけになるでしょう。

結果を真摯に受け止めて改善すれば、従業員の定着率向上や生産性の維持につながります。まずはモラールサーベイを定期的に実施し、結果をもとに改善の機会をつくりましょう。

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エンゲージメントサーベイ

エンゲージメントサーベイは、仕事内容や待遇の満足度ではなく、組織への共感や仕事への誇りといった心理的結び付きを調査するので、貢献意欲や一体感の強さを客観的に把握できます。

たとえば、エンゲージメントスコアが高い従業員は、離職率が低く、生産性も高まりやすいです。調査結果を分析することで、モチベーションに関係する要因を明確にします。成長機会の不足や人間関係の不安など、阻害要因も特定できるでしょう。

分析結果は、職場環境の見直しや人事施策の改善にも活用できます。まずは年1回を目安に実施し、職場改善に役立てましょう。

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パルスサーベイ

パルスサーベイは、短い質問を定期的に繰り返すことで、従業員の満足度やエンゲージメントを継続的に可視化できます。数分で回答できるため、負担をおさえてデータ収集が可能です。

たとえば、5問から15問程度の設問を毎週実施すれば、変化の兆しを早期に確認できます。新しいプロジェクトの開始直後や組織変更の後など、特定のタイミングで活用すると有効です。従業員の反応をすばやく把握でき、タイムリーにサポートや対話の必要性を判断できます。

月1回を目安に導入し、現場の声を継続的に拾う仕組みを整えましょう。

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組織サーベイ

組織サーベイは、風土や文化、満足度など組織全体の状態を多角的に診断する調査です。中長期的な人事戦略や、組織開発に役立ちます。

たとえば、意思決定が不透明、部門連携が弱いといった課題が明らかになり、情報共有の仕組みや、部門横断プロジェクトの有無などが見直しの対象になります。組織の根本的な問題を見つけ、改善のきっかけになるでしょう。

組織全体を対象に年1回実施し、定点観測による変化の可視化を進めましょう。

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サーベイフィードバックがもたらす4つのメリット

サーベイフィードバックを適切に運用すれば、以下のメリットが得られます。

<サーベイフィードバックで得られる4つのメリット>

  • 課題の可視化と解決策の発見

  • 組織内のエンゲージメント向上で成果につながる

  • 職場内コミュニケーションの活性化

  • 次回調査へのモチベーションがアップする

情報収集にとどまらず、組織改善を推進する手段として機能するため、詳しくチェックしていきましょう。

課題の可視化と解決策の発見

従業員の問題意識や提案は、個別に存在していても見過ごされがちですが、 サーベイを通じて意見を整理して集めれば、傾向や共通点を客観的なデータとして把握できます。

たとえば、ある部署で業務負荷やコミュニケーションに偏りがある場合、 回答を職種や役職などの属性ごとに分析することで、原因と対策の方向性が見えます。 感覚や印象ではなく、事実にもとづいた改善につなげられる点が大きな強みです。

結果を属性別に分けて確認し、具体的な行動につながる分析を行いましょう。

組織内のエンゲージメント向上で成果につながる

サーベイフィードバックは、従業員の意見を反映した改善策の実行により、エンゲージメントの向上につながります。自分の意見が尊重され、職場環境がよくなることを実感でき、職場への信頼や貢献意欲が高まるでしょう。

エンゲージメントが高い従業員は、自律的に動き、生産性やサービス品質にも好影響を与えます。その結果、企業全体の業績向上や離職率の低下といった、具体的な成果を期待できるでしょう。

サーベイ結果に応じた改善策を明確に示し、継続的な対話が大切です。

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職場内コミュニケーションの活性化

サーベイフィードバックは調査結果を共有し、改善策の意見交換する場を設けると、対話のきっかけが生まれます。

たとえば、普段接点の少ない部署同士や、経営層と従業員が課題に対して意見を交わすと、立場を越えた相互理解が進み、信頼関係の構築にもつながるでしょう。多様な視点から提案が集まれば、新たな気づきや協力体制の形成にも効果があります。

共通のデータにもとづくオープンな対話を継続すれば、組織文化の改善にもつながります。まずは結果共有の場を設け、役職を問わず自由に発言できる環境を整えましょう。

次回調査へのモチベーションがアップする

サーベイ結果によって改善を実施し、その内容を従業員に共有することが重要です。意見が実際の行動につながると、従業員の参加意欲が高まります。

たとえば、改善内容が不透明な場合、回答しても無駄と感じる従業員が増え、無力感がサーベイの形骸化を引き起こし、回答率や意見の質を低下させます。一方で、改善の進捗や成果を具体的に伝えると、次回の協力度が向上し、質の高い意見交換の積み重ねが、信頼と参加意欲を高める原動力になるでしょう。

フィードバックの透明性と双方向のやり取りを意識すると、サーベイが単なる調査で終わらず、継続的な組織改善の起点として機能します。定期的な報告や小さな変化の共有も、信頼関係の形成に効果的です。

サーベイ後に対応した内容を文書化し、定期的にフィードバックしましょう。

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サーベイフィードバックを実施する6ステップ

サーベイフィードバックは、以下の6つのステップで進めると効果的に運用できます。

<サーベイフィードバックを実施する6ステップ>

  1. 目的と対象者を明確にする
  2. グラウンドルール設定をする
  3. 質問を設定する
  4. 回答データの回収・集計を可視化する
  5. フィードバックを共有する
  6. 改善に向けて行動して運用を継続する

従業員の声を組織改善に結びつけるには、調査からアクションまでの一貫した流れが必要です。プロセスを明確にすると、建設的な対話と信頼のある職場づくりが可能になります。自社に合った運用体制を整えていきましょう。

1. 目的と対象者を明確にする

サーベイフィードバックの効果を高めるには、目的と対象者の設定が出発点になります。なぜ調査をするかを明らかにすれば、質問設計から分析、改善策まで一貫性が保てます。

たとえば、職場環境の改善が目的なら、日常業務に関わる一般社員を主対象とするのが適切です。一方、マネジメント課題を把握したい場合は、管理職層に絞った設計が必要です。部門や階層ごとに目的を分けて調査すれば、より深い分析が可能になります。

調査の目的を書き出し、対象者を役割や組織単位で明確に設定しましょう。

2.グラウンドルール設定をする

サーベイ結果をもとにしたミーティングを有意義にするには、安心して発言できる環境が必要です。 参加者が自由に意見を出せる状態があると、議論の深度と質が向上します。

たとえば、発言ルールを明示せず議論をはじめると、声の大きい意見ばかりが残ります。防ぐ手法として有効なのが以下のようなグラウンドルールの設定です。

<グラウンドルール設定例>

  • 他者の意見をさえぎらない

  • 人格批判をしない

  • 多様な意見を歓迎する

このように共通の合意があると、発言しやすくなります。まずはセッションの冒頭でグラウンドルールを提示し、全員の合意を取ってから進めましょう。

3. 質問を設定する

サーベイフィードバックの質は、質問設計の精度に左右されます。目的に合致した情報を得るには、明確かつ中立的な質問を設計する必要があります。質問が曖昧だとデータの信頼性が低下し、現状を正しく把握できないので、以下のような具体的な質問をしましょう。

曖昧な質問

具体的な質問

仕事は楽しいですか?

現在の仕事内容にどの程度満足していますか?

職場の雰囲気はどうですか?

チーム内での意見交換はどの程度活発だと感じますか?

上司はどうですか?

上司からのサポートは十分に得られていますか?

選択式で全体傾向を掴む質問と、自由記述式で具体的な意見や背景を深掘りする質問をバランス良く組み合わせると、多角的にデータが把握できます。

4. 回答データの回収・集計を可視化する

サーベイ終了後は、回答データを正確に集計し、視覚的に整理することが重要です。数値やテキストだけでは、全体の傾向や課題を把握しにくいです。

たとえば、部署別や勤続年数別など、属性ごとにクロス集計した結果をExcel、Googleスプレッドシートなどを利用し、グラフで示します。特定グループの特徴が一目でわかり、平均値だけでなく分布の違いも明確になります。視覚化された情報は、後のミーティングでの理解促進や議論の活性化にもつながるでしょう。

集計後のデータを図表化し、属性ごとの違いがわかる構成を意識しましょう。

5.フィードバックを共有する

サーベイ結果は、経営層や管理職だけでなく従業員とも共有することが大切です。透明性のある共有によって、従業員は自分の声が組織に届いていると実感できます。

たとえば、イントラネットへの資料掲載、全体会議での概要報告、部門別の説明会などが有効です。ポジティブな点と改善点をあわせて伝えると、内容への納得感が高まります。また、質疑応答や意見交換の時間を設ければ、双方向のコミュニケーションにもつながります。

まずは結果を開示する場を設け、関係者全体に丁寧にフィードバックしましょう。

6.改善に向けて行動して運用を継続する

サーベイ結果を共有するだけでは、組織の改善にはつながりません。重要なのは、得られた気づきをもとに具体的な行動を起こすことです。

たとえば、従業員から寄せられた意見をもとに、改善策を設定し、担当者と期限を決めて実行します。その後、進捗を定期的に確認し、必要があれば計画を見直すと、改善の効果が継続します。

計画・実行・評価・改善の流れのPDCAサイクルを意識すれば、従業員は「自分の声が反映された」と実感しやすいです。また、実施内容に対して具体的な指標のKPIを設定すれば、改善施策の効果を定量的に把握でき、次のアクションにもつなげやすくなります。

アクションプランを明文化し、実施・検証・改善の流れを組織全体で習慣化しましょう。

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サーベイフィードバックを成功させる5大ポイント

サーベイフィードバックを実施するだけでは、組織の成長にはつながりません。 効果を最大限に高めるには、以下のポイントをおさえる必要があります。

<サーベイフィードバックを成功させる5大ポイント>

  • ファシリテーターを交えた前向きな仕組みづくり

  • 調査結果は早く・丁寧にフィードバックする

  • 回答者を特定せず正しく伝わる環境をつくる

  • 変化によるストレスを無視しない

  • 長期的に考え再評価も実施する


ポイントを理解し、サーベイフィードバックの効果を最大限に引き出しましょう。

ファシリテーターを交えた前向きな仕組みづくり

サーベイフィードバックの成果を高めるには、前向きな対話を促す仕組みが必要です。なかでも、議論を支えるファシリテーターの存在が対話の質に大きく影響します。ファシリテーターとは、意見を引き出し議論を整理する進行役です。中立の立場で、対話を円滑に進めます。

たとえば、ファシリテーターは安心して話せる状態を保ちつつ、意見の偏りや対立を防ぎます。参加者の多様な声を引き出しながら、本質的な課題や解決策を見出す進行が大切です。スキルがない場合は、事前に進行の流れを整理し、質問例を準備しましょう。

調査結果は早く・丁寧にフィードバックする

サーベイ結果の共有は、早さと伝え方が成果に直結します。記憶が鮮明なうちに結果を伝えれば、信頼と関心を維持できるからです。

たとえば、サーベイ終了から数週間以内にデータを開示すれば、自分の声が反映されていると実感するでしょう。反対に共有が遅れると意味がないと思われ、サーベイへの信頼が低下し、次回の参加意欲にも悪影響を及ぼします。

また、共有時には、肯定的な点と改善点の両方をバランス良く提示し、主観を避けて客観的に説明する必要があります。結果を冷静に受け止め、建設的な対話へと進みやすくなるでしょう。

回答者を特定せず正しく伝わる環境をつくる

サーベイの効果を高めるには、安心して本音を伝えられる環境が必要です。匿名性が確保されないと、回答内容に遠慮や忖度が生じるからです。

たとえば、誰が回答したかわかるかもしれないと従業員が感じた場合、率直な意見を避ける傾向が強まります。実態を反映したデータが集まりにくく、課題の特定や改善施策が的外れになりかねません。

匿名性の仕組みを設計段階から導入し、個人は特定されないと明示しましょう。フィードバック時には、個人が特定されないように配慮し、集計単位を属性グループや全体に限定することが重要です。

変化によるストレスを無視しない

組織改善を進める際は、従業員のストレスに配慮することが重要です。変化が心理的負担や不安を引き起こす可能性があるためです。

たとえば、業務の変更や役割の見直しは、組織にとっては合理的でも、現場の従業員には混乱や負担となる場合があります。従業員の感情を軽視して変革を進めると、抵抗やモチベーションの低下を招きます。

円滑な移行のためには、変革の背景や目的を丁寧に説明し、納得を得るプロセスが必要です。相談窓口の設置、1on1ミーティングでのフォローなどサポート体制を設け、安心して変化に向き合える環境をつくりましょう。

長期的に考え再評価も実施する

サーベイフィードバックは継続的な運用が効果を左右します。従業員の意識や職場環境が常に変化するためです。

たとえば、サーベイ後に導入した施策が初期は効果を上げても、時間とともに形骸化する場合があります。そのため、定期的にサーベイを実施し、アクションの成果を再評価することが大切です。

再評価の結果、効果が見られない施策があれば、原因を特定し、改善策を見直す必要があります。このサイクルを文化として定着させれば、変化に対応し続ける強い組織が育つでしょう。

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サーベイフィードバックを継続的に活用して組織を強くしよう

サーベイフィードバックは、継続的に運用すると、組織改善の効果を高められます。従業員の声をもとに具体的な改善行動へつなげる仕組みが構築できるためです。

たとえば、目的設定から結果共有、改善までの6つのステップを確実に実施すれば、従業員は自分の声が反映されていると実感できます。その結果、エンゲージメントや生産性の向上にもつながります。

一方で、形骸化を防ぐには、ファシリテーターの活用やストレスへの配慮も重要です。サーベイは単発で終わらせず、評価・見直しを繰り返す長期的な取り組みとしての運用が大切になります。

サーベイフィードバックの実効性を高めるには、計画・実施・改善のサイクルを回し続けることが欠かせません。従業員とともに学び、成長する組織を目指しましょう。


株式会社HRBrain 宮本幸輝
宮本 幸輝
  • 株式会社HRBrain コンサルティング事業部 組織・⼈事コンサルタント

大学卒業後、コンサルタント企業に入社し、大手家電メーカーや製薬企業に人材マネジメントや研修を提供。また50名〜500名規模企業への⼈事評価制度構築⽀援など組織開発領域を幅広く携わる。

その後、医療業界のネットベンチャー2社のジョイントベンチャーの立ち上げに携わり、自社組織の開発にも貢献。

総合経営コンサルティング会社に移り、50名の⽼舗企業からベンチャー企業、IT(2000名)規模の⼈事制度構築⽀援を複数経験。その他にも経営戦略コンサルや⼤⼿⽯油卸企業の店舗組織変⾰プロジェクトにも参画。

現在は、HRBrain コンサルティング事業部で組織人事コンサルタントとして活躍中。
人事戦略策定から人事評価制度コンサルティング領域まで年間約20社以上を支援する。

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