配置転換と人事異動の違いとは?実施手順や法的リスクを詳しく解説
人材データの一元管理を実現し、あらゆる人事施策の実行をサポート
- 配置転換と人事異動の違い
- 配置転換・人事異動を行う主な目的
- 配置転換を行う企業のメリット・デメリット
- メリット
- デメリット
- 配置転換をスムーズに進める流れ
- 1.就業規則や雇用契約書を整理する
- 2.候補者に打診する
- 3.内示を出す
- 4.辞令を交付する
- 配置転換が違法にならないための要件
- 配置転換が違法になるケース
- 業務の必要性がない
- 不当な動機を目的としている
- 減給を目的にしている
- 従業員に配置転換を拒否されたときの対応
- まとめ
配置転換や人事異動は、組織運営に欠かせない人事施策のひとつです。組織の活性化に有効な一方で、従業員への配慮を欠いた配置転換を行うと、違法だと主張されトラブルに発展するケースもあります。
本記事では、配置転換と人事異動の違いを整理したうえで、配置転換を進める際の手順や注意点を解説します。違法にならないための要件も紹介するため、実務に不安がある担当者の方はぜひ参考にしてください。
配置転換と人事異動の違い
配置転換とは、同一企業内において、従業員の所属部署や業務内容を変更する施策のことです。勤務地が変わる転勤も、広義では配置転換として扱われる場合があります。
配置転換は人事異動と混同されがちですが、対象とする範囲が異なります。人事異動は、従業員の配置や地位、勤務条件など、人事に関する変更全般を指す言葉です。そのため、配置転換は人事異動のひとつと位置づけられます。
なお、就業規則や労働契約書に配転命令権が定められている場合、企業は原則として従業員の同意を得ずに配置転換を命じることが可能です。ただし、一定の要件を欠く配置転換は、違法と判断される可能性があります。
【関連コンテンツ】
配置転換・人事異動を行う主な目的
配置転換・人事異動を行う主な目的は、以下の3つです。
人材育成
適材適所の実現
組織の活性化
配置転換・人事異動によって従業員にさまざまな業務を経験させることで、幅広い知識や経験が蓄積されます。その結果、従業員のキャリアの幅が広がり、多様な業務に対応できる人材の育成につながります。
また、配置転換の過程で従業員ごとの適性を把握できれば、それぞれをもっとも能力を発揮しやすい部署へ配置することも可能です。
やりがいをもって働ける環境を整えられれば、従業員のパフォーマンス向上による業績改善や離職率の低下といった組織の活性化も期待できます。
【関連コンテンツ】
配置転換を行う企業のメリット・デメリット
配置転換を行うことで、企業に生じるメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
メリット | デメリット |
|---|---|
イノベーションの創出につながる | 一時的に生産性が下がる |
メリット
配置転換により得られるメリットとして、以下が挙げられます。
イノベーションの創出につながる
マンネリ化を防止できる
職場環境が改善される
イノベーションの創出につながる
配置転換により人材の配置を見直すと、新たな視点や気づきが生まれることがあります。こうした変化をきっかけに、業務改善や新しいアイデアが創出されるケースは少なくありません。
業務がルーチンワーク化し、事業の変化や成長が停滞している場合には、配置転換により組織に新たな刺激を与えることが有効です。
マンネリ化を防止できる
変化に乏しい部署では、業務がマンネリ化し、従業員のモチベーションが低下する傾向があります。
配置転換によって新しい環境や業務に携わってもらうことで、従業員の気持ちをリフレッシュさせ、意欲の向上を図れます。
職場環境が改善される
従業員の事情に配慮した配置転換は、職場環境の改善につながります。人間関係のトラブルが生じている場合でも、配置転換によって当事者同士に適切な距離を取らせることが可能です。
従業員一人ひとりが快適に働ける環境を整えることで、パフォーマンスの向上が期待できます。
なお、効果的な配置転換を実現するには、人材情報を一元管理できるタレントマネジメントシステムの導入が有効です。従業員一人ひとりの特性を可視化できるため、それぞれがもっとも能力を発揮しやすい部署を見極めやすくなります。
デメリット
配置転換には、以下のようなデメリットもあります。実施する際は、これらの影響をあらかじめ想定し、適切に対応することが重要です。
一時的に生産性が下がる
専門性が磨かれにくい
モチベーションが低下する可能性がある
一時的に生産性が下がる
配置転換後は、新しい環境や業務への適応が求められるため、一時的に生産性が低下するケースがあります。とくに、業務内容が大きく変わる場合は、立ち上がりまでに一定の時間がかかることを想定しておく必要があります。
生産性の低下を最小限に抑えるには、事前に業務マニュアルを整備し、OJTや相談窓口などのフォロー体制を構築しておくことが重要です。また、タレントマネジメントシステムを活用して従業員の強みや適性を把握したうえで配置を行えば、ミスマッチを防ぎ、生産性低下のリスクを抑えやすくなるでしょう。
専門性が磨かれにくい
業務の専門性は、同じ業務に一定期間携わることで高まります。しかし、短期間のうちに配置転換を繰り返すと、専門性を深める機会が失われてしまいます。
専門性を求められる職種や業務は、配置転換がかえってマイナスに作用する場合もあるため、異動対象者の選定は慎重に行わなければなりません。
モチベーションが低下する可能性がある
従業員の意向を十分に配慮しない配置転換は、モチベーションの低下を招きます。特に、業務内容や勤務地の変更がともなう場合は、心理的にも身体的にも従業員にかかる負担が大きくなるため注意が必要です。
配置転換を行う際は、事前に面談を実施し、異動の目的や期待する役割を丁寧に共有することが重要です。あわせて、エンゲージメントサーベイを活用し、従業員と会社との関係性(従業員エンゲージメント)を把握しておくことで、モチベーション低下を防ぐための施策を講じやすくなります。
配置転換をスムーズに進める流れ
効果的かつトラブルなく配置転換を行うには、適切な手順に沿って業務を進める必要があります。配置転換の進め方は、以下のとおりです。
- 就業規則や雇用契約書を整理する
- 候補者に打診する
- 内示を出す
- 辞令を交付する
1.就業規則や雇用契約書を整理する
就業規則や雇用契約書に「配置転換を命じることができる」といった規定がない場合、原則として従業員の同意なしに配置転換を命じる権限は会社にはありません。
そのため、従業員とのトラブルを防ぐためにも、就業規則や雇用契約書の内容はあらかじめ整備しておくことが重要です。また、配置転換に応じることについて誓約書を取り交わしておけば、労務トラブルに発展した際、会社側に有利に働きます。
2.候補者に打診する
従業員の経験やスキル、キャリアプランを考慮したうえで、配置転換の候補者を選定します。候補者に面談を行い、配置転換によって不都合や不利益が生じないかを確認しておきましょう。
面談の結果、著しい不利益が生じると判断された場合は、候補者の見直しを検討する必要があります。
3.内示を出す
配置転換の候補者が定まったら、従業員本人に内示を出します。内示の時期に法的な定めはありませんが、一般的には正式な辞令の1〜2ヶ月前に行われます。
配置転換後の勤務地や業務内容、勤務条件などは、この段階で具体的に伝えておくのが望ましいでしょう。
4.辞令を交付する
配置転換の内容が確定したら、辞令を交付しましょう。辞令には、配置転換の実施日や新しい勤務地、所属部署などを記載します。
辞令の交付方法にも法的な決まりはなく、書面のほか、メールや社内ポータルサイトを用いるケースもあります。
配置転換が違法にならないための要件
配置転換は従業員の能力向上や企業の成長に必要な施策ですが、その運用を誤れば違法と判断されることもあります。配置転換が適法と認められるには、主に次の要件を満たさなければなりません。
会社に配転命令権が認められている
配転命令権を濫用していない
まず、就業規則に、従業員に対して会社が配置転換を命じる旨が記載されている場合、労働契約上、会社に配転命令権が認められている根拠になります。
もっとも、業務上の必要性が乏しい配置転換を繰り返したり、従業員に不利益を与えたりする場合は、配転命令権の濫用と判断され、違法または無効になる可能性があります。
配置転換が違法になるケース
配置転換が違法・無効と判断される具体的なケースを見ていきましょう。
業務上の必要性がない
不当な動機を目的としている
減給を目的にしている
業務の必要性がない
過去の裁判例では、次のような理由がある場合、配置転換の必要性が認められています。
労働力の適正配置
業務の効率化
人材育成
業績が悪化した際の雇用の維持
定期的な人事異動
これらに該当する理由がないにもかかわらず配置転換を命じる際は、注意しなければなりません。
また、専門職として雇用され、職務内容を限定する合意がある従業員については、その合意の範囲内でのみ配置転換が認められます。
不当な動機を目的としている
従業員への報復や嫌がらせなど、不当な動機を目的とした配置転換は、権利の濫用にあたり、無効と判断される可能性があります。
さらに、このようなケースではパワーハラスメントに該当するとして、従業員から訴訟を起こされるリスクも生じます。
減給を目的にしている
配置転換にともなって給与額が減少する場合、原則として従業員本人の同意が必要です。同意を得ないまま減給を行えば、違法と判断されるおそれがあります。
ただし、職種や業務内容ごとに賃金体系が明確に定められており、あらかじめ周知されている場合は、有効と判断される余地があります。
従業員に配置転換を拒否されたときの対応
配置転換を命じたものの従業員から拒否された際、会社は以下の手順に沿って解決を図るのが一般的です。
- 配置転換を拒否した理由を聞く
- 配置転換の必要性を説明する
- 待遇の改善を提案する
- 懲戒処分を検討する
まずは、配置転換を拒否する理由を確認しましょう。持病や家族の介護など、やむを得ない事情があるかもしれません。
従業員の事情を踏まえたうえで、特別な理由が見当たらない場合は、配置転換の必要性を丁寧に説明したり、勤務条件の調整を提案したりするなど、異動に応じてもらえるよう交渉します。
それでも従業員が拒否し続ける際は、懲戒処分の検討もやむを得ません。ただし、処分内容によっては従業員が不服として争う可能性もあるため、処分の妥当性については慎重な検討が必要です。
まとめ
配置転換は、同一企業内で従業員の所属部署や業務内容を変更する施策であり、人事異動のひとつです。
就業規則や労働契約書に配転命令権が定められている場合、原則として、従業員の承諾を得ずに配置転換を命じることが可能です。ただし、従業員への報復や嫌がらせなど、不当な動機による配置転換は、違法と判断されるおそれがあります。
とはいえ、配置転換は適切な手順に沿って進めれば、会社と従業員双方にさまざまなメリットをもたらします。従業員の適性を把握し、適材適所に配置できれば、業績や離職率の改善も期待できるでしょう。







